
夜遅い食事の始まりはワインとパテしか出さないバールというか屋台風の居酒屋。込み合うには少し早い時間帯に到着したためか他の客はおらず、カルタゴとハンニバルの話、古代の東地中海の話を肴にシャルドネの次はカベルネのトスカーナワインを楽しんだ。歩道に椅子の幅だけ突きだしたテラス席の定員は4人だから、それ以上の場合は歩道に空き箱でも置いて机と椅子にするんだろう。店の奥のスペースは数人はいるけれど頭が天井にぶつかりそうである。この季節だから良いけれど、雨の日となんといっても冬は厳しい。

夜は、かねてから予定していた北京ダックをいただきにお仕事終了後銀座に向かう。冷菜盛り合わせのあとはナマコと葱の煮込みをオーダーした。極太のナマコに極太の葱がとてもおいしい。次は北京ダック、二人で1/2を厨房から運んできた料理人のなんとかさんが手際よくカットしてくれた。ここのダック料理は皮だけでなく肉もしっかりついているのが大好きで、切り分けられた材料を半年前に日本に来たという若い女の子が包んで皿に盛って渡してくれる。フロアの日本人スタッフのスキルは全くいただけないが、この二人のしぐさは仕事が単純なせいもあるのだろうけれどすがすがしい。北京ダックを完食してそのあと空芯菜の炒めを食してご馳走様でした。

蘭奢待の対局はなんといっても吉祥寺伊勢屋である。収容人員の見当がつかない入り組んだ造りのフロアと吉祥寺通りに面した名物のカウンターで饗されるのはどちらかというとホルモン焼きだ。串に刺してある獲物の形やサイズはかなり千差万別である。ナンコツとカシラは開店後1時間以内に売り切れるので食べたいのなら昼前に確実に到着する離れ業が必要だ。速攻で手元に届くメンチとか煮込みを串ものとともにオーダーして、それらをつまみに飲みながら串ものが来るのを待つのが正しい作法と言える。席がグループごとに別であるという概念そのものが存在しないので全員相席状態となる。こういう場所で気が付くのはおひとり様の多いことである。串は1本80円。とにかく安い。
中間に位置するのが目黒串若丸だろうか。5時開店5時半満席。座るのは何故かいつも焼き場正面のカウンター席である。鳥に限らず様々な食材を串で焼き食べさせてくれるのが嬉しいのであるが、酒飲みにとっては焼酎割のヴォリュームがより嬉しい。不思議なことにこの店には必ず西洋人のグループが最低一組いて居座ってしっかり飲み食いしている。欧米人に人気がある店らしい。家内も海外の友人を連れてきて喜ばれたと言っていた。お値段もお手頃なのがグッドである。強いて欠点を上げれば椅子が小さくて席が狭いこと。