十数年ぶりの上野駅だろうか、中央改札を抜けると、その名も恥ずかしいグランドコンコースには日本語の店の看板がほとんど無い。アトレがあるのはあきらめるにしても、ハードロックカフェが入っているとは知らなかった。東北地方の寒村から、蒸気機関車がひく二等客車に乗り、沢山の駅を過ぎトンネルをくぐり、鉄橋を渡って着いたあこがれの都会の玄関には、なんと「中央改札」以外の日本語が無い。なんだ、ウチの駅と同じじゃねぇか。というのがオチで、もう少し東京のターミナルらしい猥雑さがあっても良かったと思う。しかし、小さい駅前広場の前の信号を渡っていかにも歓楽街ふうの横町に入ると、飲み屋、パチンコ、どんぶり、キャバレーなど完全なごった煮の風景があった。やっぱり上野、ほっとする。向かった先の店頭には体裁を無視した張り紙、看板が所狭しと貼ってあり下げてあり、引き戸の開け口部分だけがタッチ可能であった。2階の畳の三畳部屋には椅子と机が年寄りに優しく置いてある。日本で最初に河豚の調理師免許を取った店とのことであるが数十年前の話で、それがどうしたの、というわけで、河豚料理は可も無く不可も無く、しかしながら、生ビールに次いで当然のひれ酒に話もすすみ、上野の夜は楽しく過ぎた。
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