2007年4月28日土曜日

医療と経済

週刊東洋経済が最新号で医療の特集を掲載しています。病院、診療所、介護に関する問題点を取り上げて論評しており、医療の関係者は我が国の場合(ほとんどの国でも同じだけれど)患者、医療の直接の関係者、関係省庁、関連企業だけれども、特集では前2者にとってどちらかといえば悲観的な方向性が出されています。各方面で取りざたされている「医療崩壊」を念頭に置いてこの特集を読むと、我が国の医療は今後どうなっちゃうんだろうという気持ちになります。我が国のいままでの医療政策が世界一の国民の健康状態を作り上げた功績は偉大なことに違いないものの、今後の方向性は他の分野で既におなじみの格差の拡大が医療分野でも生じる方向にあることを示しているようにみえます。我が国の進む方向がそうなのであれば、医療界が例外であるはずもないのですが、問題は医療費の抑制が全面にでており、そのために平均の医療レベルの低下と格差の拡大が同時に発生する可能性が高いことでしょう。

2007年4月21日土曜日

ちょっとホッとする治療

患者さんが来院したら最良の治療をしよう、というポリシーをもって診療所を開いている。
たとえば、発熱と咳で医者にかかる人はどんな気持ちで来院するのだろうか。
上司に怒鳴られながら会社で仕事をしている25歳のパート社員、Aくん:「基本的に頑丈なカラダが取り柄だから、この数日しのげるだけのクスリを早く処方して欲しい。せっかくの休み時間に走ってきたのだから。マツキヨでもよかったかな」。
引退して楽隠居の79歳の男性 、B氏:「一人暮らしで症状が出たので心配で来院。風邪だと思うが肺炎になったらどうしよう。そういえば、似たような症状で病院に行ったらガン末期だった会社の同期がいたな。この際、徹底的にカラダ全体を調べてもらいたい。時間は毎日いやと言うほどある。死ぬまでは。」
62歳の社長夫人、Cさん:「夜のパーティーまでは暇な時間なので、お医者さんにでも行きましょう。待合室が広くてきれいだし、なんと言ってもあそこの先生優しい。」
カルテに残る記録は問診、診察、そして鎮痛解熱剤と鎮咳剤などの処方だろう。でも、Aくんにはほとんど待たせずに診察してあげたいし、B氏には胸部レントゲンを追加し、次回来院時には健診をすすめたい。Cさんのためには、待合室に愛読の雑誌の最新号を置いておこう。壁の絵も久しぶりに変えようか。
訪れたひとが、そのときの病気に関してはもちろんのこと、それ以外にもちょっとホッとして帰ってくれる、そんな診療所が良いんじゃないだろうか。

2007年4月14日土曜日

08年度診療報酬改定

開業医の急患対応優遇へ=08年度診療報酬改定で-厚労省
4月13日19時31分配信
時事通信
 医療政策の現状と課題を分析した厚生労働省の報告書案が13日、明らかになった。勤務医の負担を軽減するため、開業医による在宅当番医制や休日・夜間急患センターへの勤務促進が必要と指摘。開業医のチーム化を進め、24時間態勢で高齢者の生活を支える在宅医療を構築することも提言した。同省は2008年度診療報酬改定で、夜間・休日の急患診療に携わる開業医を優遇する報酬体系に改める方針。 来週開催する医療構造改革に関する都道府県会議に提示し、都道府県が医療計画や医療費適正化計画などを策定する際に役立ててもらう。 
「夜間・休日の急患診療に携わる開業医を優遇する報酬体系」ということは、夜間・休日の診療割り増し分の財源はおそらく昼間の初診・再診の減額からひねり出されるのでしょう。そうなると、開業医に対しては、収入が欲しければ時間外診療に精出しなさい、患者に対しては、安く診てもらいたければ朝まで、あるいは月曜日まで待ちなさい、という方針の更なる強調になります。それはそれでよいのだけれど、この方向性によって勤務医の負担が本当に軽減されるのかどうかの検討がされているのだろうか。ボクの経験では、勤務医の業務は休日・夜間外来のどうこうよりは入院患者の診療にかかるものが最大の負担であり、これは上記の変更では改善されないものだと思います。さらに、24時間態勢で高齢者の生活を支える在宅医療こそ、診療報酬で自由競争による淘汰を促すよりは省がしっかりした体制を構築すべきものだと思うのですが。

2007年4月12日木曜日

角膜潰瘍

先週は読書量が急増した週でした。週があけたら右目がなんとなくゴロゴロします。角膜潰瘍が悪化したようです。コリマイ点眼を使ったら次の日には軽快して一安心です。ボクの場合、この病気は昔内視鏡検査をしすぎて起こしたものです。いまでも目を使いすぎると時々再発します。現在、消化管内視鏡は先端にCCDが装着してあり、施行者はCCDが撮った画像をモニターで見ながら検査をおこないます。ところが、昔はグラスファイバーを通ってくる画像を内視鏡の接眼部で見つめながら検査を行ったのです。みつめすぎると瞬きの回数が減るのですが、その時代の内視鏡で盛んに検査をしていた頃、目がごろごろするようになり、大学の眼科の先生に診てもらったところ、角膜潰瘍と診断されました。そこに細菌感染が起こり症状が増悪するのですね。治療は目を使いすぎないことと、抗生物質の点眼薬です。

2007年4月9日月曜日

陰影礼賛

学会からの帰りに、新幹線のなかで山川健一氏の「書ける人」になるブログ文章教室 (新書) を読みました。ボクのような超初心者にはとても役に立つ本であり、さらに、日本文学のルーツとの比較もされているなど興味深さもひとしおでしたが、なんといってもびっくりしたのが、谷崎潤一郎の陰影礼賛が取り上げられていたことです。びっくりの原因は100%ボクの個人的な問題なのですが、今を去ること何十年か前にこれ(もちろん陰影礼賛のほう)を読んで感激し何度読み返したかわからないくらいよく読んだ文章だったからです。いまでも、真冬の寒さが少し和らいだ季節の夜、黒っぽい塀のある暗い夜道を歩くと文章を思い出します。
この部分が目に入ったとき(もちろんブログ文章教室の中で)、新幹線の中で思わず居住まいを正してしまったくらいです。アマゾンのレビューではあまり星が多くないですが、ボクの心の中では☆☆☆☆ですね。


医学会総会

医学会総会で、メタボリックシンドロームのシンポ、アルツハイマーのシンポと、日本の地域医療体制、医学教育のシンポをしっかり聴いてきました。メタボリックシンドロームで細胞内外分子レベルの異常が明らかになりつつあるのはすばらしい進歩だと思います。しかし、この病態を改善させて健康につなげるために重要なのは、社会全体の病態に対する認識と医療体制の取り組み方であるのがこのシンドロームの特徴で、その見地から見ると、まだまだ掛け声だけが響き始めている段階といったところでしょうか。
地域医療のパネルでは、尾道の地域医療連携への取り組みが紹介されていましたが、これはすごい。とくに、職域を横断しての連携が施設間の連携と絡まりあってよい結果を出しつつあるのですね。中心になっている方々のご努力に頭が下がります。本来は行政がすべきことも多いのでしょうが。
医学教育の問題点とその改革に関する特別シンポは、プレスの方も呼んでいるなどかなり力がはいっていたけれど、司会の方々とスピーカーとの間の意識ギャップの大きさを浮き出しにしただけでした。残念!!
医学会総会なのだから取り上げて当然、取り上げなければならないテーマですが、企画側の準備不足でしょう。

2007年4月8日日曜日

学会


金曜日、仕事の終わりのほうはパートできてくれているチャーミングなAK先生にお任せして新幹線に。駅で買った深川めしが期待以上に美味しい。お薦めです。 包み紙や箱を見ても製造元が書いてありません。suicaの使えない東京駅のホーム売店で売っています。
新大阪駅のタクシー乗り場でいつも迷う。3kmでわけた乗り場の場所。運転手さんに迷惑かけてはいけないと思い、地図を見て確認して3km超の乗り場のタクシーに乗ったら、「この次は3km以下の乗り場へ」とのこと。
なにがなんだかわかりません。

2007年4月6日金曜日

駅のバリアフリー化

首都圏では駅のバリアフリー化が盛んに行われています。ボクが毎日乗り降りする駅でも最近駅舎の立替と同時にバリアフリー化が行われて、階段の脇に設置されていた昇降機のかわりにエレベーターが設置されました。ためしに乗ってみたところ、当然のことながら快適で、これは出来てよかった。ボクが乗り降りする駅のうちもうひとつはいまだに古い階段でエレベーター、エスカレーターの類はありません。昇降人数はかなり多くて、かつ、大きい病院が近くにあり、昇り降りに苦労する人を見かけることも多いのですが、なぜ改善されないのだろう。駅が崖っぷちのようなところにあるために、設計上不可能なのか、あるいは、近い将来大改築が予定されているのかと期待しているのですが。

2007年4月3日火曜日

マスメディアはゆっくりと死んでいくのか?

検証あるある大事典をみました。下請け、孫請け会社への丸投げ構造がはっきりしたわけですけれども、受ける側も受ける側なら投げる側も投げる側、巨額の制作費を使い、貴重な電波枠を使っての番組が、玉石混淆・カオスの世界のインターネットの中のくだらない一つのサイトと同じことをしているみたいですね。インターネットの中でこのようなことをしていれば、あっという間に泥にまみれて沈殿してしまうだろう。テレビ界の中でも局同士あるいは番組同士の競争関係を作りでもしなければ、そのうちインターネットの大きなうねりに飲み込まれてしまうのではないでしょうか。

博士もきっと怒っていますよ

やらせ、捏造が話題にならない日が少ないくらいですが、今日はあるある大事典Ⅱの検証番組があるということで、どんな検証をしてくれるのか、興味深々です。この番組にでたことがあるけれど、その時担当だった会社(D)のチームは幸いなことにとても良心的で、納得できる番組が出来たように思います。
テレビ局は視聴者に対して謝罪し、責任者がそれなりの処遇を受けることになり、それは当然のことでしょうが、気になるのは、番組に出演した海外の研究者にどのような対応をしているのかがよくわからないことです。ペットや動物の出る番組で、その動物の思っている(だろう)ことを文字で流したりヒトがしゃべる番組がありますが、実際に動物がそう考えているどうかわかるはずもないわけで、それと同じことが今回海外の研究者に対して行われたことになります。局としては当然正式の謝罪をしているとは思いますが、その行為の詳細についても明らかにするのがマスメディアとしての態度だと思います。

新年度入り

リクルートスーツの若者が街にあふれていますね。2日は新年度入りの初めての勤務日で、新入社員の皆さんは、たぶんどの会社でも社長さんの訓辞など聞いたのでしょう。話す側は事前に一所懸命考えに考えて、ご自分の人生から導き出される貴重な結論を若者に伝えるのだけれど、直前までほとんどが学生だった聞く側にしてみると、まるで現実感のないお話で、その真価がわかるのはきっと何年も経てからであり、配属される現場のことで頭が一杯になっているのだと思います。がんばれ新入社員!
若い人の間で流行っている風邪の症状が、先週あたりから変わってきていますね。熱はそれほど高くないのだけれど、のどの痛みがなかなかのもので、人によっては痛みのために眠れなかったりします。軽い咳を伴います。治療は通常の鎮痛解熱剤と鎮咳剤で良いのですが、時期が時期だけに、また、立場が立場だけに仕事を休めない人が多くかわいそう。

2007年4月1日日曜日

まじしんブログ

診療報酬改定がないので、おだやかな四月になりそうです。花粉症こそ風の強い日は感じるけれど、インフルエンザも峠を過ぎ、これからは生活習慣病と肝臓、消化器病をさらにしっかり診療しよう。それに加えて高齢者の脳神経疾患と介護の問題も真面目に考えよう。